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19年目の JNCC 歴代チャンプを振り返る!
- 2006:澤木 千敏
- 2007:石井 正美
- 2008:小池田 猛
- 2009:小池田 猛
- 2010:小池田 猛
- 2011:鈴木 健二
- 2012:鈴木 健二
- 2013:鈴木 健二
- 2014:渡辺 学
- 2015:渡辺 学
- 2016:小池田 猛
- 2017:小池田 猛
- 2018:渡辺 学
- 2019:渡辺 学
- 2020:渡辺 学
- 2021:馬場 大貴
- 2022:馬場 大貴
- 2023:渡辺 学
- 小池田猛 選手の5度のタイトル獲得に対して 渡辺 学 選手(bLU cRU Twistrer Racing)は 2020年にタイトル獲得数で並び、昨年の6度目のチャンピオン獲得でまさしく「孤高の王者」へと登りつめた。その 渡辺選手 はこれまでに最強のマッチングを見せていた2ストローク YZ250Xを手放し、今季は 2024年型の YZ450FXへと乗り換えた。昨年スポーツランドSUGOで開催されたヤマハのメディア試乗会で、この新型マシンの素性の良さに感銘を受けた渡辺選手は、トラクションコントロールの質の高さを武器として捉えている。テクニクスによるNHPコーティングとリバルビングをしたサスペンションは、「阪下は固め、徐々に柔らかくしていく」という。ただし、かつて450でタイトルを獲得した年にマシントラブルを起こしている経験もある。今回はまさにそんな一戦となってしまった。
- 今回からスタート位置がモトクロスコースへと移動し、幅が広くなったことで公平性が向上することとなった。また、今やすっかり名物であるタイヤ、ログセクションは、その大きさもさることながら、それ以上に手前の2WAYセクションが攻略ポイントとなった。
- コースディレクターの萩原一氏は「手前を複合セクションにして、心を落ち着かせた状態でタイヤや丸太に向き合うことが困難になるように変化をつけました。左のラインは丸太を飛んで、すぐに合わせて巨木へトライ。右のラインは飛べる人はロックを飛んでもいいですし、そうでない場合はロックでマシンが振られてタイヤにまっすぐに入るのを難しくしました。手前から考えてアプローチしてもらうことにしたのです。とは言え雨天のコンディションでもいけるように、タイヤの下には棒などで補強したりしています」と前日に話してくれた。
矢野カズト 年を跨ぎ JNCC.2連勝!
- さてレース1周めは 渡辺 学 がトップで戻り、僅差のままAA2クラスの 小林雅裕 選手が追いかけ、矢野和都 選手(RG3 Racing)、馬場大貴選手(YSP浜松 with BABANASHOX)が続く。矢野選手は3周目には2番手へ浮上。さらに次の周、渡辺選手が丸太で引っかかっている際に矢野選手がパッシングして、トップに躍り出た。矢野選手の走りに焦りはなく、ミスも皆無で9分台のラップを淡々とこなしていく。一方、スタートで出遅れた馬場選手も驚異的な追い上げを見せていた。
- 今年は全日本モトクロスチームの若手メンバーと共にハードトレーニングを重ねている馬場選手。選手達を管理するために自身は大声をあげて鼓舞しながら同じメニューをこなすのだから、実はチーム内で一番ハード?なトレーニングをこなしている「監督」でもあるのだ。本業とモトクロスチーム活動で多忙な馬場選手はバイクに乗る時間も削られているが、実はこのトレーニングのおかげで調子が良いということを前日に語ってくれていた。それをまさに実証する追い上げぶりである。
- レースは残り1時間となると、雨は小雨に変化。矢野選手は馬場選手に対して1分ほどの差をつけながら順調に周回していたが、ラスト2周で矢野選手の姿を捉えると猛プッシュ。計画通りトップに立つことができた。しかしドラマはまだ終わらなかった。
- 「まさか3時間走って最後の最後でモトクロスをすることになるとは!(矢野選手)」
- 「L1でカズト君が真後ろに迫って来て、逆転されてしまいました(馬場選手)」
- 運命のラストラップ、モトクロスセクションで背後の矢野選手を抑えるため、馬場選手が選択したのはイン側のライン。しかし矢野選手はアウトからスピードを乗せて、次のコーナーで刺して逆転。これで勝負がついたのだった。
- 矢野選手は
- 「普段はハードエンデューロに出ていますが、クロスカントリーはモトクロス出身ライダーがスピード勝負している世界だから本当にしんどいです。DB(馬場選手)に抜かれてやばいと思ったけど、ここはなんとか勝ちたいと思いやる気を出して、轍でもたついているところを行かせてもらいました。『ミスター阪下』に勝てたので、今日から僕が『ミスター阪下』ということでいいですか(笑)」とコメント。
- 2011年COMP-Aクラスに挑戦し始めた矢野選手、書き手の私、宮崎は会社の同僚として共に遠征し当時の走りや挑戦を間近に見て来た一人だが、今の矢野選手はその頃とはまるで違うライダーに見える。ハードエンデューロの練習、まだ数回しかやっていないというがトライアルにも挑戦し、モトクロスの練習も時折行なっている矢野選手。実は昨年の最終戦 AAGP高井富士でゲスト参戦したスチュワード・ベイラー選手にウッズの攻略を聞いており、それを次の参戦時に試したいという。この時のレースも日本人トップでゴールしたこともあり、本戦も勝てる実力はすでに有していていたのではないかとも思う。しかし本人的には「潜在能力を出し切れていない気がする」というのが本音のようだ。つまり、伸び代がまだあることを自認しているのだ。
- 今回優勝を逃した馬場選手は前述のように、調子の良さと速さを証明したし、小林選手も「トップ2人の速さについていくことができなかった」と言いながらも総合3位、AA2クラス優勝を飾って幸先の良いレースを終えた。渡辺選手は当然このまま黙っている訳もなく、マシンの対策と乗り込みによって自分のペースをつかんでくるはずだ。過去の事例、引き出しを多く持つチャンピオンならではの強みは必ずある。また昨年の負傷で欠場が響いた 熱田孝高 選手(COMP AA1)に関して RG3ジャパン福森氏、新田氏によれば、本来は昨年最終戦でマシンを完成させ本戦に挑む予定だったのが負傷で叶わず、まだマシンも合わせこみができていないのだという。つまり全てが揃った時点で再び熱田選手がトップ争いに食い込んでくることが想像できるのだ。
- もう一人注目したいのは総合5位に入った 齋藤祐太朗 選手(Wise Beta Racing)。昨年までの2スト300(BETA RR2T300)から4スト350(RR4T350)にマシンをスイッチして参戦。これは2024年各種モデルを比較しての結果だというが、さらに興味深いのはサスセッティング。昨年の開幕戦取材時にも話してくれたのだが、今まではソフトスプリングを入れていたのを真逆の発想に転換し、バネレートを高めている。そうすることで初期の柔らかい部分を使うことができるという。バネを弱く減衰を効かせると単発的には速く走れるのだが身体への負荷が大きくなる。このことに気づいた齋藤選手は、昨年からセットの方向性を変えて尻上がりに順位が上がって行くレースを実現し、この開幕戦でも有言実行。15位から徐々にタイムをあげて5位でフィニッシュしてみせた。阪下は苦手で良い成績を残せてこなかったというが、今回の5位には本人も満足していた。
- 本戦では若手ライダーの台頭も大きなトピックとなった。2021年雨の鈴蘭、超ハードレースとなった舞台でFUN GP総合優勝した 大重勇透 選手(ハスクバーナショップ平田自動車)は、やはり雨とマディに強いライダーと言えるのだろう。このレースでは終始安定した走りでCOMP-Aクラスを制した。「昨年はよくない結果が続いていましたが、今年は平田自動車さんにマシンを完璧に仕上げていただきました。また次も優勝を狙います」とコメント。
- COMP-Bクラスを制したのはキッズ時代からクロスカントリーライダーとして成長してきた 橋本大喜 選手(Bamboo Riders & GAMMY Racing)だ。何しろトライアル出身エンデューロIAライダー大神智樹選手の秘蔵っ子でもあり、レース前の金曜日に丸太攻略方法を直伝されている。「バンブーレーシングと大神さんには色々と教えてもらっていて、感謝しかないです」とコメントしていた。
- もう一つ本戦のトピックとして取り上げたいのが、急遽COMP-AA1に参戦を果たしたオーストラリアの ステファン・グランキスト 選手だ。中国製の450ccラリーマシンKOVE 450RALLYによる参戦、Youtubeで見たサザンハリケーンへの挑戦意欲のままに急遽来日する行動力にも驚かされたが、本当に凄いのはそのスキル。巨大丸太も余裕でこなし、一時総合6位を走ってみせたのだ。アンダーカウルでエンジンやエキパイなどを囲むラリーマシンゆえに排熱性が低くオーバーヒートは想定内。クーラントを吹いた時点でリタイアしたことで、ダメージを最小限に抑えての力走だった。Enduro GPにも参戦経験が豊富なステファン選手の実力を十分にみせてくれたライダー。またいつか参戦してほしいものだ。
- 最後に、皆さんが気になっていること。それは「渡辺 学 選手に何が起こったのか?」ということだろう。
- その敗因と分析をレース後に伺ったので紹介しよう。
- 「久しぶりの450ccなのですが、あまりマシンに乗る時間が無くて前日の金曜日に初めて乗りました(サスペンションのセットも未完成)。自分が乗りやすいようにバイクの対策もやったつもりですが、まだまだ対策が必要でした。単純に僕の準備不足ですね。バイクが届いたのが今年の2月に入ってからで、バイクの作り込む時間が作れませんでした!
- レースは、スタートからうまく1周目からトップを走れましたが、周遅れのライダーを抜くタイミングが難しく、ミスをして何度か転倒してしまい順位を落としました。ノーマルのFXタンクで走ったのですが、1回の給油では足らなくて2回の給油をしたり、ゴーグルも4~5回交換にピットに入りました。雨の対策も万全では無く、マシンの準備不足もあり、とりあえず怪我をしないように走り切ったという感じです。
- テージャスに向けて、テクニクスさんにサステストをお願いしてあり、まだまだ乗りやすくしてもらう予定です。
- 次の大会にはチャンピオンらしい走りが見せれるように頑張りたいとおもいます。間も無く広島も始まってしまいますが、やれることをすべてやり、YZ450FXのポテンシャルの高さを見せたいと思います」と力強く語ってくれた。
- 次戦は3月24日、テージャスランチで開催されるビッグディア広島。ハイスピードエリアや 沢、ウッズ、アップダウン、ガレ場などバリエーションに富んだコースで 頭角を表すのは誰なのか、注目したい!
- 丸太セクションでミスした 渡辺 学 選手(bLU cRU Twistrer Racing)を交わした 矢野和都 選手(RG3 Racing)。完璧なコントロールで余裕すら感じさせる走りは、ハードエンデューロなどにより培われたものだろうか?悲願の初優勝ながら本人は「潜在能力を出し切れていない。まだまだ成長できるはず」と話す。
- ラスト1周は阪下マイスター 馬場大貴 選手(YSP浜松 with BABANASHOX)との超絶バトルとなった。矢野選手がモトクロスセクションで抜き返し、見事初優勝を飾った
- 全日本モトクロスライダーの大城魁之輔選手、町田旺郷選手、石平凌大選手を監督しながら、自らもトレーニングに勤しむ 馬場大貴 選手は、2位に終わるものの驚異的な追い上げをみせ、今季乗れていることを証明。「RB(馬場亮太 選手)も復活したら兄弟で優勝争いをします」と、チャンピオン奪還に燃えている。
- 世代は異なるものの、かつて全日本モトクロスを戦ってきた二人。ラスト1周は完全にモトクロスバトルとなり、矢野選手は大会ベストラップの8分52秒241をマークした!
- 単独総合3位に入ったのはベテランの小林雅裕選手。「トップ2人の背中さえも見れませんでしたが、それでも嬉しいいですね」と、AA2クラスを制した。
- ゴープロベースも折れて破損、ネックレスも紛失するという大変なレースだった 渡辺 学 選手だが、怪我なく終われたのが幸い。マシンを仕上げ、次戦広島に向けて優勝を狙っていくことだろう。
- 齋藤祐太朗 選手(Wise Beta Racing)は昨年から取り組んできたサスペンションセットが功を奏して、総合5位の好成績を残した。この4年間は2スト250・300に乗ってきたが、BETA参戦当初の時以来の4スト(350cc)にスイッチし、幸先の良い結果となった。
- 重量のある450ccラリー車で驚異的なスキルをみせ、一時は総合6位を走った ステファン・グランキスト 選手。自国オーストラリアのクロスカントリーはもとより、ENDURO GP参戦経験も豊富なトップライダーならではの走りで楽しませくれた。
」
- 2年連続FAチャンピオンの 吉崎一弘 選手は今季からCOMP-Aクラスに挑戦。本戦はクラス15位に終わったが次戦以降に期待したい。
- 昨年度に匹敵する巨大なタイヤとログセクション。手前には微妙な間隔に置かれた小丸太やロックセクション。トップライダーは手前をジャンプでクリアして挑む。
- 久々にJNCC参戦の 池田孝宏選手(うず潮レーシング福山)は、モータリストのレンタルサービスを利用し、ファンティック XXF450で参戦を果たした。
- スタート位置がモトクロスコースへと移動したことで、よりワイドな1コーナーへと進化。より公正で、迫力のあるスタートシーンとなった。
- 総合7位に 中島敬則 選手(bLU cRU レーシングチーム鷹)、8位に 小島太久摩 選手(YAMAHA bLU cRU)。中島選手のマシンのこだわりの一つはハンドルバーの低めのセットで、姿勢を低くしてコーナリングを安定させること。小島選手はKYBエアサスを装備したYZ250X。プライベート参戦ながら、ヤマハの一員としてサービスやフィードバックに熱心。今季は成績も狙っていくと言う。
- 父の裕之選手と共に「親子AAライダー」としてデビューを果たした 渡辺敬太 選手(Beta FULL GAS Racing & フレアライン)。「初めてのAA参戦でかなりきつい思いをしましたが、なんとか表彰台に上がれてよかったです」
- 今季はCRF250Lで参戦を行う 松尾英之 選手(FFF Racing with DIRTFREAK)。すでに世利和輝選手によるレース参戦で、熱やフレーム、クラッチなどネガとなる部分を洗い出し対策済みのトレールバイクは見事完走を果たして、ポテンシャルの高さを証明した。
- COMP-Aクラスを圧勝したのは 大重勇透 選手(ハスクバーナショップ平田自動車)。「次戦も優勝を狙います」と高らかに宣言!
- 大神智樹選手による丸太特訓の成果も発揮し、見事 COMP-Bクラスを制した 橋本大喜 選手(Bamboo Riders & GAMMY Racing)。家族に見守られながら、堂々と表彰台でコメントした。
- COMP-Rクラスで唯一12周を走り優勝したのは 岡伸郎 選手(TOYれーしんぐ with バイクヤードKiyo)だった。