ステファンも戦慄した All New テージャス 終盤の COMP-GP !!

  • JNCC 全日本クロスカントリー選手権 第2戦 ビックディア広島
    日時: 2024年3月24日(日曜)
    開催地:テージャスランチ
  • Reported by DAIGO MIYAZAKI

 ハードEDトップさえも苦戦した レイニー テージャス!

 

  •  広島県安芸高田市のコース「テージャスランチ」は、モトクロスコースやゲレンデコースともまた一味異なる独特なシチュエーションを誇る広大な会場だ。アクセルワイドオープンの フラットエリアやウッズ、沢、ガレ、ヒルクライム など多彩なセクションがライダーを待ち構える。毎年 JNCCが開催されているおなじみのコースではあるが、晴れれば埃が舞い轍は固まる。雨が降れば赤土は相当滑りやすくなり、路面の下に隠れている岩がグリップ力を失わせる方向に働く。いずれにしても簡単ではなくタフなコースだ。それゆえに県外からの参加者が多いのも特徴で10時間以上の時間をかけて関東などから遠征するライダーも多いのは、それだけの魅力を秘めていると言えるからだ。今回のエントリー数は 323台。例年よりも寒い気候で終日雨が降ったものの、当初の降雨予想よりも少ない雨量ですんだのはラッキーだったかもしれない。しかし COMP-GP終盤 止んだ雨による土の重量増は、優勝を争うトップライダーたちをも苦しめることになったのだ…。
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  • さて 今回のコースは事前にSNSなどで発表されていたように、ウッズ区間の新規開拓がなされていた。コースディレクターの JNCC萩原一氏いわく、「今回は雨の影響で残念ながら2~3割はカットを余儀なくされましたが、狙いとしてはウッズやガレのある上りとキャンバーなどの区間を増やして多彩なテクニックを駆使できるようにしたことと、ラインの自由度を高めて大渋滞などを解消して楽しくレースができるようにすることでした」と説明してくれた。
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  • カットされることとなった新規開拓セクションは今後のお楽しみということにしておき、さっそく前日は下見がてら歩いてみた。下見中のライダーの皆さんが真剣にラインを検討していたのは、やはりテージャス山南側の沢からの上りだった。3本以上のラインが確保されているが、すべて簡単ではない。なにしろ一直線に簡単に上り切れるラインが皆無。スタック者がいるなかで毎周的確に判断して、ときに瞬時に方向転換できないとスムーズにクリアできない。ショートカットされたとはいえ、この雨天の厳しい状況のなかでは十分に新セクションが機能していたと言えるだろう。
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  • 今回は雨天による路面悪化の影響でライダーの疲労などを考慮しレース時間を短縮 約2時間の勝負となったが、COMPライダーでも帰ってこれないライダーが出現するなど非常にタフなレースになった。余談ではあるが、この短い時間のなかで広大なテージャスランチのどこを周り撮影するのか?メディア同士相談しながらおこなわければいけない難しさもある。これもまた、クロスカントリー取材の醍醐味でもあるのだ。
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  • さて、スタートは今季全日本モトクロスチームも牽引する 馬場大貴 選手(YSP浜松 with BABANASHOX)が抜群の反応を見せてホールショット。長丁場のクロスカントリーゆえに、スタートに関してモトクロスほどの重要性はないものの、調子の良さをここで表現していたといってもよいだろう。最終的には総合6位で終える結果となった。「課題はビビってしまう自分でした。もっとマディを練習しなければ」と振り返った。
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  • 前戦開幕戦サザンハリケーンで総合4位に終わった 渡辺 学 選手(bLU cRU TwisterRacing)は、今季から乗るYAMAHA YZ450FXの熱対策やトラブル防止策を施してきた。 1周目はステファン選手と何度もマシンが接触する プライドをぶつけ合うようなリアルヒート の末、ブッチ切りのトップで会場中を釘付けにし戻ってきたものの、今回非常に難易度が上げられたギャンブル的要素のある「ラスベガス」を果敢に攻めた結果 惜しくも失敗し大きくロスしてしまった! 結果総合3位でのゴールとはなったが、盟友リッジサイクル馬庭氏によるマシンセッティングなどの効果もあり、自身では満足いくレース内容となったようだ。
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  • さて、トップ争いは Stefan Granquist 選手(BIVOUAC大阪)と 矢野和都 選手(RG3 Racing)による、ビバーク大阪系チーム同士の対決となった。雨天によるハードなコンディションということで、矢野選手には2連勝の期待もかかっていた。なにしろ、昨年最終戦AAGPの日本人トップ、今季開幕戦では馬場選手との死闘を制し優勝。また他イベントの話にはなるが、3月10日におこなわれた全日本ハードエンデューロ選手権KEGON HARD ENDUROでも圧勝した矢野選手は、いま国内で一番乗れているエンデューロライダーといっても過言ではないだろう。
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  • Stefan選手は開幕戦ではKOVE450ラリーで参戦し残念ながらリタイアを喫したが、なんとリベンジを果たすべく 急遽このレースにGASGAS EC350Fでの参戦を表明。その行動力の凄さはもちろん驚嘆すべきものだが、なんといってもその卓越したスキルが素晴らしい。エンデューロ、クロスカントリー、近年ではモトクロスでも抜群の速さを見せるライダーを輩出しているオーストラリアのトップライダーであり、この難コンディションの広島でも素晴らしいスキルを随所でみせてくれた。
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  • Stefan選手は序盤の爆発的なスピードが驚異的だった。「GNCCではオープニングラップが重要」とは本人談。2周目に刻んだ「15分10秒 668」は圧倒的で 大会最速ラップ賞 を受賞。5周目まで16分台を刻み、ここでの矢野選手に対するアドバンテージが最後まで活きて、優勝を手に入れることができた。
  • 一方矢野選手も3周目には15分台を叩き出し、単独2番手を快走。レース終盤はコンディションの悪化により二人ともタイムを落としていくことになったが、最終ラップの8周めで より落ち幅の大きかったのが Stefan選手だった。
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  • レース終盤雨が止み、土は重くなる。それはハードなコンディションに自信を持つ矢野選手でさえ相当厳しくなったと語ったほど。Stefan選手は最終ラップに20分台と大幅に落ち込み、矢野選手のわずか43秒前でフィニッシュする結果となった。
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  • 「ラスト2周はコンディションが変わって、もはやフラット路面でさえまっすぐ走るのが難しい状態になったよね。クレイジーだったね! 君は大丈夫だったのかい?」と、ゴール後に矢野選手に話しかけたという Stefann選手。ラストラップですれ違いざまに矢野選手の追撃が視界に入り、実は焦っていたというのもレース後談。
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  • いずれにしても今回の Strefan選手の走りを「ラスベガス」やウッズ区間で目撃したが、リカバリーやライン攻略の速さは圧巻だった。すべてに置いて迷いがない、まさにクロスカントリーに求められる能力を存分に出してくれたレースであった。
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  • 総合3位に 渡辺 学 選手、4位に馬場選手。そして5位には 鈴木涼太 選手(YSP浜北大橋racing)が安定した走りを見せて入った。さらに6位7位は 小菅泰輝 選手(teamspline with iRC)小菅浩司 選手(teamspline with iRCTIREニュートン)と親子揃って入賞した。
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  • COMP-AA2クラス はベテラン 鈴木健二 選手(bLU cRU Blue Riders with YAMALUBE)と、若手ルーキーの 渡辺敬太 選手(Beta FULL GAS Racing &フレアライン)による一騎打ち。「中学生に後ろから煽られ煽られ、おじさんにはきつかったけど、若いライダーが最後までついてきてくれたのは楽しかったです」と満面笑みの鈴木選手。渡辺選手も「目標の一桁でゴールできたこと、健二さんと走れてすごく楽しかったです!」と興奮さめやまない表彰式となった。
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  • 本戦は COMP-Aクラスも熱かった! 5周めまでトップを快走していたのは 町田旺郷(まちだ あさと)選手(YSP浜松 with BABANASHOX)。結果はクラス3位、総合13位。町田選手は幼少時よりモトクロス活動をおこない、2023年はヤマハワークス体制といえるYAMAHA FACTORY INNOVATIONチームから最高峰クラス IA1(4ストローク450cc)に参戦するも、負傷による長期欠場が続いていた。今季は馬場選手の元で IA2ライダー(4ストローク250cc)としてスポット参戦するが、「他のライダーがやらない独自の活動をしたい」ということで、全日本モトクロスと日程が被らないラウンドに参戦予定だ。JNCCデビューは IAルーキー時代の爺ヶ岳ということで久々の参戦となったが、今後の活躍が楽しみな一人だ。
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  • そして COMP-Aクラス優勝は前戦に続き 大重勇透(ハスクバーナショップ平田自動車)。序盤は出遅れたが、走行中に好調さを実感し順位をあげてトップへ。総合でも9位に入り、マディ2連戦を制したのだった。
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  • 次戦は4月21日の グリーンバレー森羅(熊本県阿蘇観光牧場)。ドライならば超快速ハイスピードレース、マディならば火山灰独特の黒土がライダーを苦しめてきた阿蘇。 今年の天候は果たしてどうか…!?

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 


 
 
 
 

 
 
 
 

 

  • 最後は 矢野選手に43秒差まで詰められたもののトップをキープして優勝した Stefan選手。ゴール後は 矢野選手と共に悪化していったコンディションを振り返った。これで開幕戦サザンハリケーンのリベンジ達成。矢野選手も日本人トップの戦績で終えた。

 
 
 
 
 
 
 


 

  • 随所に見られた Stefan選手の実力。序盤のラスベガスでこそ登頂できなかったが、長い手足を活かして無転倒で華麗にリカバリー!

 
 
 
 
 
 
 


 

  • 多くのライダーが苦戦した轍だらけの新規ウッズ。一瞬でラインを判断し、途中からロスなく進行方向を変えて登頂していく。ここだけを見ても日本人ライダーとの数秒の差は、実はとてつもなく大きいのだろうと予測できる。

 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 

 

  • ラストラップを除き、ラスベガスを登頂成功させた 矢野選手。ほぼモトクロスマシンのKX450X(ハードエンデューロでは GASGAS 2ストマシン)だが、経験値とスキルで悪コンディションを味方につけた。

 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 

 

  • 本戦から「エナジードリンク KIIVA 」のスポンサードを受けて、YZ450FXのマシングラフィックも変更してきた 渡辺 学 選手。トラブル対策などを経て、、、。 ラスベガス失敗は本当に痛かったが ファン想いのチャンプのこと、エスケープ回避の選択は無かったんだろう。 それにしても ステファンとの ワールドクラスバトル は凄かった!( ぜひ 公式ムービーでご覧ください!)

 
 
 
 
 
 
 


 

  • テージャス山の向こう側は、地獄の沢とウッズ!? 下見でも注目されたセクション。ラインの選択肢を広げたおかげで、取材側としてはライダー達の攻略が見られた面白いセクションとなった。

 
 
 
 
 
 
 


 

  • 雨量が多かったこともあり、沢の水量も多め。問題は沢そのものではなく、どのラインを使って上がるかだが、基本的にはどこでも問題なく上がることが可能だった。

 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 

 

  • COMP-AA2クラス はベテランの 鈴木選手とルーキーの 渡辺敬太 選手の一騎打ちとなった。最後まで引き離されなかった敬太選手の走りに、鈴木選手も喜びを見せていた。

 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 

 
 
 
 

 

  • イン側グリッドを選択した 馬場選手は抜群のスタートを決めて、一気に2番手以降を引き離した。

 
 
 
 
 
 
 


 

  • 馬場選手と直線で並んでいたのは、今回からハスクバーナFE250にマシンを変更して臨んだ 小林雅裕 選手(ALPHATHREE)。序盤は3番手を走行していたが、サイドカバーとフィルターを足で引っ掛けて脱落させてしまい脱落。調子は良さそうなので次戦に期待。

 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 

 

  • 2023年度 G-NETチャンピオンの 原田皓太 選手(T.H.S.Racing with MITANI S3)が参戦! 1周目にスタックして 92位から 26位まで追い上げてのゴール。ラスベガスは 原田選手さえも失敗するほどの難易度。「JNCCライダーのタフさはすごい。このままじゃ終われないからまた参戦したい」と意欲を燃やす。

 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 

 

  • 開幕戦に続いてマディコンディションでの上手さ、速さを見せた 大重選手。なんと9番手から追い上げての優勝だった。「平田自動車の上田さんのサポートに感謝したいです」

 
 
 
 
 
 
 


 

  • COMP-Aクラス2位の 小沢 瞬 選手(信州マウンテンパーククラブby.momoG)の追い上げもすごかった。10番手からほぼ毎周順位をあげて2位へ。

 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 

 

  • モトクロス現役 IAライダーの町田選手は2回めの JNCC参戦。「トレーニングを兼ねて参戦することは馬場さんだけでなくジェイさん(ジェイ・ウィルソン選手:2023年全日本モトクロスIA1チャンピオンで昨年のチームメイト)にも後推しされたそうだ。終盤までトップをキープする快走をみせた。

 
 
 
 
 
 
 


 

  • 地元の名ショップMOTO WORKSから参戦した 高畠 渉 選手は、COMP-Bクラス優勝。「COMP-Aクラスへの昇格を目指しているのでこの1勝は大きいです」と振り返った。

 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 

 

  • COMP-R 優勝 は 河原廉弥 選手(Team へっぽこ)。テージャスランチをホームコースとしており、自信を持って挑んだようだ。